Amazonオーディブルで聴く読書した【ナチュラルボーンチキン】の見どころと本音レビューをご紹介します。
世界最大級オーディオサービスオーディブルが、オーディオファースト作品として配信スタートした【ナチュラルボーンチキン】。
オーディオファーストとは、まずオーディブルで配信した後書籍化するという試みです。
前情報をほぼ持たない読者が聴くので、ナレーターを担当した人気声優の日笠陽子さんも相当なプレッシャーだったのではないでしょうか!
それでは、【ナチュラルボーンチキン】を早速レビューしていきます。
・Amazonオーディブルで耳読書した【ナチュラルボーンチキン】本音レビュー
・Amazonオーディブルを無料で試せる方法
【ナチュラルボーンチキン】のあらすじ
著者:金原ひとみ
・毎日決まったルーティン生活を送る45歳の浜野文乃(はまのあやの)。
出版社労務課勤務の浜野は仕事へ行き朝昼夜と同じ内容の食事を取りあとは動画を見るくらいの単調だけれど特に不満もない日々。
そんなある日上司からの命令で編集部の平木直理(ひらきなおり)の様子を見に行くことに。
コロナ禍以降在宅勤務は週に2回までと変更されたにもかかわらず理由をつけて在宅勤務しまっくているのだ。
浜野が訪れると平木の家は散らかりまくりホストクラブ通いのレシートが山ほど出てきて浜野は絶句。
毎日楽しいことばかりだと言い張る平木、自分とは程遠い存在だと思いつつなぜか親交が徐々に深まっていき・・・
金原ひとみが贈る、中年版「君たちはどう生きるか」
【ナチュラルボーンチキン】見どころ3選
の見どころは以下の通りです。
- 繰り出される会話のテンポ感
- 価値観は変化する
- 中年のラブストーリー
1つずつ見ていきましょう。
①繰り出される会話のテンポ感
1つ目は、繰り出される会話のテンポです。
まず、主人公の浜野さんは10年以上前に離婚しそこから交際はおろか友だち付き合いもせず淡々と生きてきた女性。
仕事以外で人と会話することはほぼなかったと想定すると、それにしては会話が上手過ぎました!^^
オーディオファースト作品ということで、聴いてもらって100%理解してもらうことが前提とするとこの会話のテンポ感は一種の賭けだったような気もします。
でももちろん賭けなどではなく、出版社と著者の金原ひとみさんが綿密に計画を練り完成させたということが読後しっかりとわかりました。
ルーティン生活を送る浜野さんと、「ルールってなに?」というくらい自由奔放な平木さんが出会い噛み合わないながら畳み掛ける会話に笑いが止まらなくなりました。
平木さん(現在の名前は平木直理でヒラキナオリ、過去の名字は中でナカナオリだった!)と交流が深まるうち、浜野さんは自身のルーティンを破って夜にコンビニへ行ってお酒とアイスとカルパスを購入。
しかもすべてむさぼり食べたことに自分が1番びっくりしていました。
中盤以降出てくる「チキンシンク」というバンドのボーカル「かさましまさか」さん。(ウソみたいな名前ですが、そのまま「マサカさん」と呼ばれ続けます。)
マサカさんはほぼ相槌を打つだけのおとなしい人ですが、浜野さんとどんどん会話が盛り上がっていくのが2人が心を通わせていったのかなと思える描写でした。
作中でよく「◯◯って△△でいいですよね?!」のような問いかけが出てきたのですが、それに対して「ですね!」と必ず肯定していてそれがなぜか好きでした。
肯定してくれる誰かがいるというのは心の安定に繋がりますよね!
ナレーターを担当した日笠陽子さんの平木さんがとてもかわいらしかったです。
②価値観は変化する
2つ目は、価値観は変化するです。
浜野さんは過去に結婚・離婚・流産・不妊治療としんどい経験をしています。
その渦中で浜野さんは「旦那と子どもを持つ」ことを選び中々妊娠できないことを知ると必死に不妊治療に取り組みました。
でも、元夫は「妻がやりたがっているから付き合ってあげている」というスタンスで2人の気持ちは全く違う方向を向いていました。
流産後はさらに取り憑かれたように不妊治療に臨み「なにがなんでも子どもを持つ」ことに執着。
のちに浜野さんは振り返りました、「なんであんなにも子どもが欲しい、いや持たなければならないと思っていたのかわからない。子どもまったく好きじゃないのに」と。
子どもとおじさんは自分たちが「これでいいのかな?合ってる?」という迷いを全く持っていないから苦手と言っていました。
たしかに、大人になっていくにつれ経験値が上がり「良いと悪いの境界線」が見えるようになるということが思い当たります。
そこでストッパーが働き、人間関係に波風を立てないでいられたりする分、傍若無人な人を見ると呆れ返る気持ちもわかります。
自分だと思っていた価値観、結構簡単に変わったり「なんであのときそう思っていたんだろう?」ということも。
結構価値観というものはアテにならないと思っておく方がいいのかもしれませんね!
③中年のラブストーリー
3つ目は、中年のラブストーリーです。
聴きはじめのとき、恋愛要素が入っていると思っていなかったので途中でマサカさんが登場しても最初は浜野さんとどうなるとか考えていませんでした。
実は過去でマサカさんは浜野さんと会っていて昨日今日会ったばかりで好意を抱いているわけではないと知ったとき、急なラブ展開にドキドキ。
でもおもしろいのはそこは2人とも40代のいい大人。
色々な経験をし、2人ともいわゆる毒親に育てられているので結婚に幻想も夢も希望も抱いてない感じでした。
浜野さんは離婚歴があることから「今後子どもを持つとか義実家がどうとか考えられない」と素直な気持ちを伝えると、「付き合ってない体(てい)でお付き合いしましょう!」と提案。
「今後別れることになったら・・・」と不安を言う浜野さんに「僕たちは付き合ってないので別れません!」と。
なんだかよくわからない状態のようですが、これで浜野さんが安心してマサカさんと一緒にいられるならそれがベストなんだと思えました。
マサカさんはライブパフォーマンスなどでわけのわからないアーティストという印象。
それがプライベートでは恋愛経験がほぼなくピュアなので、浜野さんのことを絶対に見捨てない安心感がありました。
この2人が末永く残りの人生をお互いを思いやって過ごしてくれるといいなとほっこりする気持ちになりました。
おまけ:食事風景
浜野さんがルーティン生活を開始してから基本的に夜は「もやしとキャベツと豚肉を焼いたもの」しか食べていませんでした。
それが、平木さんやマサカさんと出会い「551パーティー」や「ラーメンパーティー」「カニパーティー」などテーマを設けて食事会を開催。
平日は平木さんに誘われビュッフェに繰り出し、お腹がはち切れそうなほど食べる様子。
食事描写を聞いているだけでお腹と心が満たされていく感覚に陥りました。
元々食べることは大好きですが、年々胃もたれを感じるようになり多く食べるとキツいので物語で美味しそうな食事の様子を知れるのはとても嬉しいです♪
食べることに執着していない浜野さんが、「誰かと食事をする」ためにカニについて詳しく調べたりするのも共感。
誰かと食べるから張り切りたくなるんですよね!
自分1人でも美味しいものは美味しいけれど、「ま、こんなもんでいっか」と妥協するのも早いもの。
家族との食卓も久々にテーマを決めて楽しみたくなりました!
【ナチュラルボーンチキン】本音レビュー
金原ひとみさんは【蛇にピアス】で芥川賞を21歳の若さで受賞してから継続的に小説を書き続けている作家さん。
何冊か拝読したことがありますが、いつも思うのは語彙力と表現力、イマドキ言葉への精通っぷり。
不倫や危なげな女性をテーマにした作品などでは、表現力の深さにうなるものの共感は結構しにくい感じでした。
でも【ナチュラルボーンチキン】は、私のような一般的な主婦にも共感しやすいお話だと思いました。
虐待ネグレクト、毒親、親ガチャなど社会問題になっていることが多くあり、それらを経て今大人になった世代の人たちはどのような気持ちで今を生きているのか。
運良く、なんとか無事に今まで生きてきたけれど心に重たいものを抱えたままという可能性はかなり高いのではないでしょうか。
困難な状況にいる子どもは1人でも多くそこから脱して欲しいと多くの人が願います。
では困難なまま大人になった人が今もしんどい場合はどこにいけば助けてもらえるものなのかと考えこんでしまいました。
主人公の浜野文乃やマサカはもちろん、自由人の平木も幼い頃と名字が変わっていたりあれほどホストに入れ込むに至るにはなにかあったのかもしれません。
浜野の元夫も常識人に見えてかなり闇深い男にみえました。
「大人」ということでなんとか繕って生きていますが、誰しも結構しんどいことって抱えているものなのでしょうね。
中年版、「君たちはどう生きるか」と問われ、しばらく考え込んでしまいそうです。
【ナチュラルボーンチキン】を今すぐ読める方法
【ナチュラルボーンチキン】を今すぐ読める方法は、Amazonオーディブルです。
ナチュラルボーンチキンはオーディオファースト作品のため、オーディブルでしか読書できません!
声優の日笠陽子さんが感情豊かに各キャラクターを演じ、機微(きび)を伝えてくれますよ。
特に浜野と平木の演じ分けは秀悦で、同じ人と思えないくらいキャラが立っているので必聴です!
Amazonオーディブルでぜひお試しください♪
オフライン再生ができてとても便利ですよ。
まとめ
今回は、Amazonオーディブルで聴く読書した【ナチュラルボーンチキン】について本音でレビューしてきました。
①繰り出される会話のテンポ感
②価値観は変化する
③中年のラブストーリー
【ナチュラルボーンチキン】というタイトルの意味は特に解説されていないのでわかりませんでした。
ナチュラルボーンは「天性の、生まれながらの」という意味で、チキンは「弱い意気地なし」のような使われ方をするので「生まれながらの臆病者」のような意味合いなのでしょうか。
そうだと仮定すると、ほとんど多くの人間がそうなのかもしれないと思ってきました。
自信を持って断言することも、堂々と主張することもかなり勇気がいることです。
でも、自分が特別そうなのではなくみんなそんなもんだと思えたら少しは気がラクになりそうです。
オーディオファースト作品ということで、ラジオドラマのような目の前に浜野たちの姿が自然に浮かんでくるような不思議な読書体験ができました。
ぜひ、オーディブルで新感覚読書体験を味わってみてくださいね!