柴田錬三郎賞で本屋大賞2021第4位、伊坂幸太郎さんの人気小説【逆ソクラテス】!
伊坂幸太郎さん作品といえば、独特の世界観と巧みな伏線回収が魅力ですよね!
この記事では『逆ソクラテスの伏線回収がすごい!考察と意味についてまとめ』と題し、伊坂幸太郎さんの逆ソクラテスの伏線回収、考察、言葉の意味について紹介します。
- 逆ソクラテスの伏線回収がすごい!
- 逆ソクラテス考察
- 逆ソクラテスの意味について
早速見ていきましょう!
※こちらにはネタバレが含まれていますので、ご注意くださいね。
逆ソクラテスの伏線回収がすごい!
【逆ソクラテス】は、伊坂幸太郎さん作品の醍醐味である伏線回収がすごいです。
逆ソクラテスは、短編ごとに時代が違い各章ごとに同じ登場人物がでるのですが、ハッキリと「あのときの◯◯」とは明言されていません。
後から、「あれ、もしかして逆ソクラテスの◯◯?」や、「アンスポーツマンライクの△△では?!」と発見。
安斎
・父親が世間を騒がせた事件の犯人で長い間懲役生活を送っている
そのため母親と各地を転々と暮らしていて「先入観を持つこと」の危険性を心から感じている
→逆ワシントンに登場する靖の義理の父親の可能性が高い
草壁
・いつも同じ服を着ていてみすぼらしさからクラスでいじられている存在
担任の久留米からも蔑まれているため自分は「できない奴」だと思い込み現状に流されている
安斎、加賀らのアイディアでプロ野球選手に自信をつけてもらい「自分の可能性」を信じようとする
→冒頭に登場したプロ野球選手だと思われる
磯憲
・すべての短編にほぼ共通して登場する教師
年代は物語により新任だったり中堅だったりベテランだったりする
高城かれん
・かつていじめをしていた経験からいじめられる側に非はないし、いじめに対して人一倍敏感
「逆ワシントン」で我が子の参観中に不穏な空気を感じ子どもたちの前でいじめの無情さを説く母として登場
渋谷亜矢
・頭が良く口うるさくリーダーになりたがる女子
自分がすべて正しいと思っている
そんな渋谷はその後も改心することなく成長したとすると「逆ソクラテス」に出てくる優等生佐久間の母と考えられる
こういうタイプは先祖代々引き継がれるのかと思ったが佐久間が母親に対して「なんか違うと思う」と苦言を呈しているところから負の連鎖はここで断ち切られつつあると予想
悠太と村田花がその後結婚
騎士人(ないと)
・父親が大企業の有力者から周りからチヤホヤされて育ちクラスのみんなを下に見ている
担任の覇気のない久保先生や同じTシャツを毎日平気で着ている保井福生(やすいふくお)をバカにしている
のちに恵まれた環境での窮屈さやプレッシャーから通り魔事件を起こしたのは彼ではないかと推測
主人公となるミニバス5人組が小学生・高校生・社会人の様子が登場
磯憲
・ここでは40代で癌を患ってから50代頃まで
ミニバスチームのコーチをしてメンバーの良き理解者になっている
通り魔
・「非オプティマス」の騎士人がこの可能性が高い
テレビ中継で登場するバスケット日本代表選手
・「アンスポーツマンライク」の駿介
元ユーチューバー遅咲きの選手だがすっかり日本の中心選手に成長
バスケの試合を見て涙する家電販売店員
・「アンスポーツマンライク」の通り魔と思われる
謙介の母
・「スロウではない」の高城かれんと予想
いじめのことになるとヒートアップする様子から
この他にも、まだわからないことがあります。
- 「非オプティマス」の久保先生が持っていた紙袋の中身と潤の父親はなぜ潤に暴力をふるっていたのか
- 「スロウではない」の司がのちに磯憲の元教え子と出会うことから磯憲と再会
※元教え子は誰なのか - 「逆ワシントン」のゲーセンの店員が誰だったのか
伊坂幸太郎さんが結果的に「これは◯◯です」と明言されることはないので、伏線回収のすべては読者1人1人の想像力と読解力に託されます。
【逆ソクラテス】は繰り返しよむごとに新しい発見があり伏線回収に気付けるおもしろい作品!
ぜひ何度も読んでみてくださいね!
逆ソクラテス考察
逆ソクラテスの考察は以下の通りです。
ここでは伏線回収ではない視点からまとめました。
- ノスタルジーを味わえる
- 先入観は敵
- 人は変われる
①ノスタルジーを味わえる
1つ目は、ノスタルジーを味わえるです。
逆ソクラテスの主人公がすべて小学生だったことから、どこか懐かしいような自分の頃を思い出すような気分に浸れました。
小学生のときの「モテ」基準が「足が速いこと」で、それは年がいくごとに大した意味を持たなくなるというのも納得。
小学生時代って、なんであんなに「足の速い子」がモテるんでしょうね^^
また、ささいなことに難癖をつけたり、やたらとクラスの中心になろうとする子など苦い記憶も思い出されました。
羨ましいのは、磯憲(いそけん)先生の存在。
あとがきで、伊坂さん自身の小学4〜6年生の担任の先生をモデルにしていると知りました。
一生に1人で良いから「良い先生」と出会えたらラッキーですよね!
②先入観は敵
2つ目は、先入観は敵です。
5作の短編集すべてに共通しているテーマが「先入観」。
大人になればなるほど今までの経験に基づいた凝り固まった考え方にとらわれること、ありますよね!
フラットでいたいと思いつつ、自分が自信があったり経験豊かだと思える分野のことになると途端に思い込みによる決めつけに走りやすい気がします。
子どもに対してだと、特にその傾向が強くなります。
ママ友関係でも、事前に悪い評判を聞いてしまったママさんと接するときビクビクして、結果的に「良い方だった!」ということも。
子どもの勉強に関しても、昔自分がやってよかったからといってそのやり方が今通用するとは限らず子どもの意見を聞くことが大事と日々実感…
それでも、親や大人は自分の経験値でものを語ることが多く先入観を覆すのは困難。
逆ソクラテスで、安斎くんが久留米先生の先入観をどうにか変えさせようと奮闘している様子は、私たち大人に対しての挑戦状だと受け取りました!
③人は変われる
3つ目は、人は変われるです。
人は「変わる」とも「変わらない」どちらもよく聞く言葉です。
結果的に、逆ソクラテスの登場人物たちの生き様から、「人は変われる」と信じることができました!
「アンスポーツマンライク」の歩(あゆむ)は、「一歩踏み出せない歩くん」という呪詛(じゅそ)にとらわれていました。
「いざというとき、自分はまったく動けない」と。
また、ある不審者は2度も歩たちを襲い、もう更生できないだろうと思っていたら「逆ワシントン」でまさかの再登場。
ちゃんと社会復帰していてびっくり!
「スロウではない」の高城かれんは、転校生で元いじめらっ子と思っていたら『「いじめは絶対に許されないと」と固く誓う元いじめっ子』でした。
「人は簡単に変わらない」という私の先入観を見事に打ち砕き、「自分次第で人は変われる」と思わせてくれました。
逆ソクラテスの意味について
【逆ソクラテス】というタイトルの意味は、そのままあの有名なソクラテスの説の逆ということです。
無知の知:唯一の真の英知とは自分が無知であることを知ることにある・汝自身を知れ
↓
自分がいかに知らないかを知っている分、自分はまだマシだ
自分はすべてを知っているような傲慢さを持ち、いかに自分が知らないかを知らない人
私が初めて【逆ソクラテス】を読んだとき、この言葉の意味が本当に染みました。
「足るを知る」という言葉もあり、自分の考えが固定概念で偏っていないか、広い視点で物事を見られているのかは常に意識しなければいけませんね。
多くの人が逆ソクラテスの意味を知って広い気持ちでコミュニケーションを取れたら気持ちの良い世の中になりますね。
逆ソクラテスあらすじ
逆ソクラテスのあらすじを簡単にまとめました。
著者:伊坂幸太郎
・敵は先入観!先生からの評価はその後の人生に関わってくる!
「逆ソクラテス」偏った考え方の担任をなんとかすべくカンニング作戦決行
「スロウではない」運動得意ではない子がリレーの選手に選ばれてしまい・・?!
「非オプティマス」やる気のなさそうな久保先生が突然饒舌に語りだす!
「アンスポーツマンライク」元ミニバス仲間5人とある不審者、そこで磯憲先生がかける言葉とは?
「逆ワシントン」人間正直が1番?ワシントンが怒られなかったのはまだ手に斧を持っていたから?!
いずれも小学生が主人公のどこか懐かしい中でスカッと爽やかな読後感を味わえます!
本音レビュー
【逆ソクラテス】は2020年に発売、伊坂幸太郎さんデビュー20周年節目の1冊です。
本屋大賞にもノミネートされ、完成度の高さに大きな話題となりました。
個人的には短編集より長編物が好みなのですが、逆ソクラテスはどの話も短編に思えない完成度。
どの話の登場人物たちも生き生きとしていて、脳裏にくっきり彼らの動く姿が想像できました。
驚いたのは、5作の短編集と思いきや連作になっていたこと。
しかも話によって時代が少しずつ違い、出てくる磯憲先生が新任教師から50代まで幅広く登場。
そこで、「もしかしたら◯◯と△△は同一人物なのでは?!」のようなことをいくつも発見!
さすが伊坂さん、「ほんのささいな描写にまで意味があったのか!」と恐れ入りました。
再度確認したい部分が多く、読了後に何度も戻って聞き直しました。
冒頭の野球中継のところ。
「ここにも伏線回収が!」と気付き、思わず声をあげ泣きそうな気持ちになりました。
すごいです、伊坂幸太郎さん。
心が満たされ、泣きたくなるような、最後はスッキリ爽快。
読み終わってから登場人物たちのその後をあれこれ考察を続けられるのは作家さんからのプレゼントですよね!
どっぷり世界観に浸れます!
まとめ
今回は、『逆ソクラテスの伏線回収がすごい!考察と意味についてまとめ』と題して、伊坂幸太郎さんの人気作品【逆ソクラテス】の伏線回収がすごい点、考察と言葉の意味についてお伝えしました。
伊坂幸太郎さんは、法学部出身ということも関係しているのか言葉を巧みに操り表現力の幅が広い作家さん。
伊坂さんの性格が作中の登場人物に乗り移っているのか、彼らも少し理屈っぽい言い回しをしたり妙に論理的だったり現実に近くにいたらツッコミたくなる気がします。
1度や2度読むだけではすべての伏線を回収しきれていない気がして、何度も味わって楽しめるのも醍醐味です。
大人は小学生時代を思い出すことができ、中高生は読んでいてリアリティを感じてみてくださいね!